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福岡地方裁判所 昭和52年(わ)68号 判決 1977年5月16日

本籍

熊本県玉名郡南関町大字関町一、三二九番地

住居

福岡市中央区春吉二丁目一一番一四号

医師

野田亮介

大正一五年二月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官南部義広出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金六万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

被告人に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡市中央区春吉二丁目一一番一四号に居住し、同所で野田産婦人科医院を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、

第一  昭和四八年分の総所得金額は四、九八九万七、六五七円で、これに対する所得税額は二、五九四万三、九〇〇円であるのに、自由診療の報酬の一部を除外して架空名義の定期預金等に預け入れるなどの行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日、同区天神四丁目一番三七号所在の福岡税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、一八三万七、五八九円で、これに対する所得税額は三三一万五、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二、二六二万八、二〇〇円を免れ、

第二  昭和四九年分の総所得金額は五、〇七〇万一、二四四円で、これに対する所得税額は、二、四八七万六、九〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五〇年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、三八四万四四五円で、これに対する所得税額は三五一万五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二、一三六万六、四〇〇円を免れ、

第三  昭和五〇年分の総所得金額は六、九一〇万三、七二四円で、これに対する所得税額は三、六八〇万九、八〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五一年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、四〇四万二、二七〇円で、これに対する所得税額は三三一万四、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税三、三四九万五、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人及び証人野田良子の当公判廷における各供述

一、被告人の検察官及び大蔵事務官(三通)に対する各供述調書

一、野田良子の検察官及び大蔵事務官(五通)に対する各供述調書

一、渡辺経範の大蔵事務官に対する供述調書

一、渡辺経範外一名、野田良子及び桜井荘介作成の各上申書

一、大蔵事務官作成の査察官報告書六通(検31.32.36.40.62.63号のもの)

一、吉村重喜、木瀬克已、橘豊、中村忠義、北岸松男、福西通男、渡辺靖、佐々木義孝、磯野博雄、松田一郎、井田守、丹羽成典、木村義弘、田淵義久、岩橋郁夫、斉藤貞一及び武田弘作成の各証明書

一、山口康夫外一名、伊藤秀孝(二通)及び東篁外一名作成の各確認書

一、福岡地方貯金局長作成の回答書

一、検察事務官作成の電話聴取書

一、領置してある所得税の青色申告承認申請書一枚(昭和五二年押第五三号の八)、青色申告者書類綴一綴(同号の九)、日計表一綴(同号の一四)及び預貯金等明細一綴(同号の一七)

判示第一及び第二の事実につき

一、領置してある金銭出納帳一冊(同号の一〇)

判示第二及び第三の事実につき

一、領置してある現金出納帳一綴(同号の一三)

判示第一の事実につき

一、領置してある所得税確定申告書(四八年分)一枚(同号の五)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の査察官調査書(検37号のもの)

一、藤森亮及び山田浩作成の各証明書

一、領置してある所得税確定申告書(四九年分)一枚(昭和五二年押第五三号の六)及び現金出納帳一綴(同号の一一)

判示第三の事実につき

一、領置してある所得税確定申告書(五〇年分)一枚(同号の七)及び現金出納帳一綴(同号の一二)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の所為は、それぞれ所得税法二三八条に該当するので、いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額(情状によりいずれもその免れた所得税の額に相当する額)を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一、八〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金六万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

昭和五二年五月一九日

(裁判官 浦上文男)

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